今週のお題「夏休み」
二週間ほど前のこと。
昼過ぎに散歩をしていると、歩道を朝顔の鉢を持って歩く小学生たちの姿があった。
バイト先で小学生と接する機会があるのだが、ある活発な少女が僕に話しかけに来た。
話の流れで、夏休みにどこに旅行するかという話になった。
「そういえば、夏休みの宿題全然終わらなかったな〜」などと思いながら、
「そろそろ夏休みだろう、宿題やってるのか」と僕が聞くと、
「夏休みは明日からだから、明日からやるの」との返事。
僕と似たところを感じた。
こいつは夏休みの宿題を最後までやらずに、最終的に終わらずに先生に怒られるタイプの人間だ。
そこで、いましめにこう言ってやった。
「俺の友達なんて夏休みに入る前に半分くらい宿題終わらせてたぜ!」
だからなんなのか。小さな背丈の少女はそんな表情を浮かべていた。
だからなんなのか。言ってしまったあと自分の発言に対してそう思った。
二十代も中盤に差し掛かった男の発言とは思えない。なぜこんな言葉が口をついて出たんだろう。
思えば、小学生時代の僕は夏休みに入る前から、夏休みの宿題なんて全部できるわけないよ、と諦めていた。数人の友達は、「1ヶ月以上あるし大丈夫やろ!よゆーよゆー」と言っていたが、僕は内心では「まぁこんな事言うやつはやらんやろ」と冷めた目で見ていた。そんな小学生だった。僕は計算高かった。「時間的に無理やろ。プール行きたいし、おじいちゃんちいきたいし、釣り行きたいし、ペーパークラフト作りたいし……etc」
僕らの学校では、夏休みに入る数日前から渡されていた。終業式には、「宿題は絶対にちゃんと終わらせるように」と担任の先生が教壇で怖い顔をして叫んでいた。僕の脳裏には「夏休みの友」と表紙に書かれた宿題の冊子が浮かんでいた。
「夏休みの友」なぜこんな嫌らしいタイトルを付けるんだろう。宿題なんか忘れてしまうのが友達という存在だ。
「夏休みの友」
母親から「これからあなたの友達となる子よ。仲良くしてあげてね」と言われれば、僕は迷わず「いや!こんな友達いらん!!あっちいけ!」と言っていただろう。
「いややな、いややな、なんでこんなことせなあかんのかな、絶対ムリやんな、絶対なんかないって先生ゆってたけど、絶対ちゃんとせえって……そんなんおかしいよな……めちゃくちゃ、めっちゃくちゃやわァ……」机におでこをこすりつけながらブツブツ言う癖のあった僕は、存分に不平不満を床に垂れ流していた。
「宿題、どうすんの?」帰りの会のとき、隣に座っている友達に聞いてみた。何たる愚問。どうすんのもこうすんのもない。やれや。
「え、もう半分くらい終わらせたから、夏休みはゆっくりしよかな……」内向的な友達はそういった。
あまりの発言に僕は気絶しそうになった。
昼間の強い日光が教室にいっぱいに入っていたのを覚えている。
遠い昔の友達。僕は今でもその友達を尊敬している。
嗚呼、あいつ今も一歩先の行動をしてるのかな。